定期的に話題になる同人誌の「頒布」と「販売」に付いての覚え書きです。私も明確なソースをきちんとたくさん引いてこれてるわけではないのでまあ…話半分に聞いてほしいです…(予防線張り張り…)。
①実際はどういった運用をされている言い回しなのか
主に二次創作において「同人誌は権利者にお目溢し頂いているため『販売』ではなく『頒布』である」というのはよく言われてはいますが、これはあまり実態に即した認識とは言えません。
二次創作は最低限の節度や、当該のジャンルのガイドライン(あれば)、イベントの参加要項、それらをしっかり守ろうねというのは大大大大大大前提として、「頒布」という言葉自体は一次創作・二次創作問わずイベント主催側が要項などで無料配布と有料販売をまとめて言うための言い回しなことがほとんどです。
使い分けは主催のイベンターさんの裁量にもよりますが、だいたいは
「お金を取るものは販売」
「お金を取らないものは配布」
「両方を指す時は頒布」
…という感じです。
例えば同人誌即売会の代名詞とも言えるコミケ(ジャンルは多岐に渡り、一次創作や評論等も盛んですが二次創作がかなりの割合を占める)の参加案内は結構緩めに販売と頒布が混在していますし、規定に沿わない時に準備会から出されるのは「販売停止カード」です。(そもそも同人誌即「売」会なので…)
https://www.comiket.co.jp/info-c/C106/C106Appset.html
また、販売の建前上の言い換えであればコミティアは一次創作オンリーでサークル参加者≒原作者・権利者なので頒布でなく完全に販売でもいいはずなのですが、無配物も包括して表現するために頒布という言葉を使っていて、その事はコミティアのQ&Aにも記載があります。
https://www.comitia.co.jp/faq/index.php?mode=faq&id=133
ですので、品物の如何を問わず、「頒布」という大分類の中に「販売(有償)」と「配布(無償)」という小分類があるのが実際の運用に即した認識かなと思います。

また、私がめちゃくちゃ法律に詳しいわけではないですが著作権法上でも「頒布」という言葉は定義されていて以下の通りです(映画について書いてるとこは一旦置いといてもろて、冒頭の部分)
十九 頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。
https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048#Mp-Ch_1-Se_1
②何が問題なのか
「頒布であって販売でないので商用利用ではない」という認識で個人利用のみ許諾のフォントや素材を有償の同人誌に使っているパターンや、商用利用に際して許可取りが必要な被写体を頒布なので!で無理に撮影しようとしてるパターンもちょくちょく見かけてこわいな…と筆者は思っています。「頒布」は「アマチュアのすることですから〜」という免罪符ではありません。
「同人について個人利用とみなしてくれるフォント制作者さんもいますよ」というご意見ちょくちょくいただくのですが、それはフォント制作者さんが同人に理解があって特記してくれているという特殊なパターンです(例・フロップデザインさんなど)。
お金を取ったら基本的には販売・商行為なので、よそのフォント作者さんは個人利用とみなしてくれたから!と思い込みで乗り切らずに、各フォントの規約を都度よく読み、不明点があれば制作者さんに問い合わせをしてみるなどしてみてください。
「二次創作は小規模の流通でありファンの好意からくる趣味の活動なので権利者が見逃してくれている(もしくはガイドラインによって許可してくれている)」はある程度は事実ですが、一方で赤字だろうがどんなに少ない部数だろうがお金を取ったら販売であるため責任はちゃんと持つという意識は持っておいたほうが良いかなと思います。
あとこれは私怨最近あったことなのですが、noteで「本を売る」という言い回しをしたら「思想が透けて見える、この記事を書いたやつは儲けるつもりだ」というご感想をいただきました。儲けの是非については別問題なのでここではしませんが、日頃「ハァハァ割増で前日入稿だけど特殊紙が使えるぞ…」とか言って印刷費回収できない本作って喜んでる人間が儲かってると思いますか? 言葉狩り、マジでやめようね。
③同人歴まあまあある人の寝言
この項目はあくまで私の体感なので、ここまで以上に話半分に聞いてほしいです。まーーーーじで老人の寝言。すべて憶測と肌感です。正しいとは限りません。
なんだかんだ同人歴がもう十数年になりますが、いろんなイベントにおいて販売と頒布の言い回しは長らく緩めに混在していて、二次創作に対して「販売でなくて頒布」であるって厳しく言う人が増えてきたのはごくここ数年な気がしています。これまで60冊くらい同人誌を出してきましたが通販のことをわざわざ通頒って書くのも少なくとも自分が通ってきたジャンル(男性向け女性向け両方、アニメ、ゲーム、漫画、一次創作などなど…)では、10年くらい前はほぼ見たことなかったです。なんならよく見るようになったのここ3年くらいかも。わかんねえ、ジャンルによるかもしれねえ(ガバ)
原因は色々考えられて、DL同人で売上が上がる人が増えてきたこと、コロナでイベントのシェアがかなり変わって女性向け・男性向け間や各ジャンル間がかなり断絶されてしまったこと、SNSでローカルルールがエコーチェンバーしていること、ネットプリントなどの即売会以外での配布手段が増えたこと、メロブやとらが昔と比べたらずいぶん小部数でも委託を受けてくれるようになったこと…考えたら色々出てきて、数年で目まぐるしく状況は変わっていて、色々複合的に関係してるんじゃないかなあと思います。
ハイクオリティで採算性が高いグッズを簡単に作れるようになったり、DL同人等で印刷費等をかけずに収益を得ている人がいたり、実態はどうあれ傍目に「儲かってそう」に見える活動が目に付くようになったのも事実で、これらに対して二次創作でやりすぎるなよ!と釘を刺すのにわかりやすい言葉が必要だったのかなというのは察するところがあるので、「同人誌はお目溢しいただいているので頒布」という説自体は誤情報ですが、そう言われるに至ったであろう経緯は必ずしもすべてが悪とは思っていません。
例えば「暗がりで刃物を使うのは危ないよ」というよりも「夜中に爪を切ると親の死目に会えないよ」のほうが嫌だしこわいので…人は実感を得るのに物語を必要としている…。
ただひと昔前と比べて二次創作を一定条件のもと許可したガイドラインを作ってくれる権利者さんがずいぶん増えたり、同人誌即売会の参加規定もコロナ禍を機に規模やジャンルによって細かく日々変わってきていて、「思い込みや口伝の情報だけを信じず、ちゃんと自分で都度きまりを読んで責任を持つ」というのが今まで以上に大事になっていると感じます。
④おわりに
いつもはお前「気軽に同人誌出そう」って言ってるくせに説教かよ〜って思われたらマ〜〜〜ジですみません。でもみんなに楽しく同人活動してほしいからよ…大事なことだと思って…責任を持つというのは達成感にもつながることだと思いますので、ぜひ楽しく活動するためにもスタンスを見つめ直してみてはいかがでしょうか。じゃあな!
【重要・2026/04/30】
ノウハウ系記事に関して、作業途中の実物や成果物を見せてくださらない方からの完成報告と感謝の匿名コメントは虚無を褒め返してあげなきゃいけないの本当ダルいから今後は一切いらないです。疲れました。
作品見せてくれる方の話はいっぱい聞きたいです。