「落下の王国」がすげー良かったので取り急ぎ感想(※ネタバレあり)

※ネタバレがある。
※マジで取り急ぎなのでいつもみたいに章立てがない。


落下の王国 4Kデジタルリマスター」を見てきました。

https://youtu.be/W5Xxn5fTrGM

なんか映像美!映像美!って言われる作品ってだいたい内容つまんねえんだよな~(ド偏見)って思ってるのと、創作やってた方がこれ見て筆折っちゃったって話聞いて一応商業漫画の次回作準備してる最中なのでコワ~となっていたのと、あとお好きな方には申し訳ないんですが自分が海外3Dアニメのギョロ目が動悸する恐怖症レベルで苦手なので今それ系の大人気作品やってるので足繁く通っていた好きな作品の劇場版が終わって以降は映画館避けてたりとか、なんやかんや見に行けてなかったんですが、重い腰を上げて見に行ったんですけど(ミニシアター系なら件の人気作と上映館かぶんないでしょうと思い)、結果。

https://x.com/hisanori_natano/status/1997654641870516271?s=20

もう終盤ワケわからないくらい号泣してしまいました、すげーいい映画でした。あまりに良すぎる創作讃歌だろ、大好きなメタモルフォーゼの縁側と同じ心の棚に入れておきます。

よくみんなこれの内容黙って映像美!映像美!だけ話せるな…ネタバレしない鉄の意志????リバイバル上映で???内容がすげーいいって話誰もしてくれなかったせいでタオルとかハンカチ持ってなかったので襟首クチャクチャになった、許さねえ

創作讃歌ではあるんですが創作意欲が湧く・萎えるの話じゃないだろうこれ、と思いました。

なんかこう、世の中の作品って無機的にポンと湧いてくるんじゃなくて一個の作品には作ってる側にも受け取る側にもひとりひとり人生があるだろうみたいな話じゃあなかったですか、これ…おお…。

言われてた映像表現のすごさについては多分手塚治虫とか大友克洋の表現に今更驚かないみたいな理屈で多分ワイが既にこの作品以後を知ってるから聞いてたほどびっくりしなかったんだけど、内容がすげーいいじゃないですかこれ、本当に。

鑑賞に正解はないと思うんだけど、これを見て創作活動に対して思うことって「作品の後ろにも前にも人間がいる」じゃないかと思うんですけど、どうでしょうか。

詳しく言わないですが多分私が職業柄、勤め先では他の方に無茶苦茶注文をするクリエイティブ側の人間だから、なんか多分どっかしら心のスイッチ切ったほうが指示って無慈悲にできるんだろうけど、その先にいるのはロイと同じように人間なんだよなみたいなこと思うなどしたりしてウッ…となっちゃったりがある気がします。創作意欲の湧く萎えるじゃなくて私も作品を生業として作ってる人間の端くれなので襟元を正そうとなりました、人がいるんですよ作品の前にも後ろにも。

でもこれかなり山口貴由先生が「特撮」に脳を焼かれて劇光仮面描いてるのと同じ理屈でターセム監督が「映画」に脳焼かれて作ってるやつだよ、劇しい光案件です。

あと映像美、先に書いたようにアフター落下の王国の人間なのでいうほど驚かんかったとはいえ、その映像美にしっかり意味があったのすげーよかったなと思います。

偏見すぎるんですけど映像美ばっか推される作品って内容言うほどおもんなかったりそれやるリソースがお話とあんまつりあってねえな…って結果として表面上のクオリティは高見えしても内容的には目高手低になりがちな印象を持っているんですが、落下の王国でいわゆる映像美って言われているシーンはロイ(と、アレクサンドリア)が「頭で想像してる話はこんくらいなんすよ!!」って空想のシーンです。

創作活動って頭の中では素晴らしい出来を思ってても技術的に難しかったりする事がいっぱいあって、特に映像作品では1人では難しいときってかなりあって、そういうのを実現してくれるのがロイみたいな仕事の人たちで、21世紀の撮影技術で映像美をひたすらやったあとで作中時代なりの無声映画でロイが怪我したスタントのシーンが一瞬だったのどうとでも取れるんですが、それって「たかが一瞬」「されど一瞬」といいますか。

あれを見てロイはどう思ったんでしょう。
「たかが一瞬に」と思ったのか、「それでもやった意味があった」と思ったのかな、どうなんやろな。でも私はそこを明言しなかったのがきれいだと思うんです。ロイ本人の言葉でなくて、アレクサンドリアがロイ(みたいな人)ががんばってる姿に思い馳せるようになったのがもうある種答えじゃん、と思います。映画って作り物ですけどそれを作ってる人の人生は本物って話じゃん、だからこそ受け手にも伝わるんじゃんと思います。そしてもうそれは作ってる側の人間がどう思っていようが受け手のものです。だからロイの言葉はラストにはなくアレクサンドリアの語りで締めだったんだろうなと思います。

私はお仕事って結構序盤めの指示出しが主なんですけど、脳内で想像したこと指示にするとなんか想像してたんと違ってしょぼいな…もっとすごいはずなんですけど…ってなったやつに後工程の方たちが仕上げをしていって、おい!!おれが頭で想像してたよりすごいです!!ってなる瞬間がすげー好きだから自分ができない工程やってくれる人たちのことすごい尊敬してるんですけど、なんかそれをあまりに美しい物語にされて食らっている感じです。人間こそが作品を作っているって話だろコレ

あとこのアート性の高さで創作に対して出される思想がかなりアシッドめに「作者の都合で受け手を振り回すな」寄りなの、すごい、そんなことあるんだ。終盤ロイが「俺の話だ」って言ったあとにアレクサンドリアが「2人の話でしょ」っていうとこが本当に大好きすぎます。そう、創作物って作者だけのものじゃなくて世に出た瞬間に受け手の物にもなるんだよな。

アレクサンドリアが仮面の山賊≒車椅子に乗ったロイの二次創作(二次創作いうな)してくるとこ、多分無意識作者の思想が作品に反映されてるの感じ取った上でのそれでも私はこうなってほしいって気持ちでの絵でしょう、やっぱり二次創作じゃねえか???

創作讃歌は世の中にいっぱいあるんですけど、作者や作品だけでなくて受け手のことも書いてくれる作品がやっぱりすごく好きだなと思います。私はたまたま作る側もやっていますが、元はといえば受け手側で、世の中の大抵の人は受け手側です。創作活動って言語表現でないにしても一種の言語でありコミュニケーションだろと思っています。なので作中に受け手の感情が不在の創作讃歌って自慰じゃねえかなーと常々思っています。その点ちゃんと創作がコミュニケーションである話でこんないい話だったので落下の王国大好きになってしまったぜ。

作者の手を離れた作品から受け手が行動起こすシーン好きすぎるので冒頭で少しタイトル出したメタモルフォーゼの縁側の実写版で追加された原作にはない雪さんが好きな作家にファンレター書くシーンとかも大好きなんだよな。

なんか尻込みしてたけど本当に見に行ってよかった映画です。
言われてた映像面はなんか世間的に美しい美しい多分言われてるとこじゃなくてなんかなんでもない病院のシーンとか引きの絵で長回しで撮ってるのとかちょっとホラーっぽかったしドワハハハ黒沢清の映画みてえだって喜んでしまったりとかなんですけど(黒沢清監督大好きマンなので)、内容が本当によく、その内容にちゃんと必要とされる映像美だったのがすごく良かったです。派手だろうが地味だろうが絵には意味があるべきです(思想)。その点、落下の王国はずっと意味のある絵で、その意味が好きなやつだったのですごく良かったな。

めちゃくちゃいい映画でした。パンフ欲しいな。